【ガルパン】興収22億円突破!異例の大ヒット『ガルパン』の手描きアニメではできなかった超こだわりとは?
16.08.29

謎の戦車アニメが異例のヒットを飛ばしている。

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『ガールズ&パンツァー』(通称:ガルパン)は2012年から放送されたTVアニメで、学園艦と呼ばれる船の上に高校があり、女子高生がスポーツとしての”戦車道”を学校対抗で競うという学園ドラマ。戦車戦のシーンがあまりにスゴいと、従来のアニメファンに留まらない幅広いファンを獲得している。

TVシリーズの人気を受け、昨年11月に全国の映画館で公開された『ガールズ&パンツァー 劇場版』は、なんと半年以上に渡って劇場公開中で興行収入は22億円を突破。

そのヒットは映画だけに収まらず、舞台となった茨城県の大洗町は“聖地”とされ国内外から多数のファンが“巡礼”、映画に触発された普通のサラリーマンが戦車のプラモデル作りにハマり、戦車プラモが店頭から姿を消すなどの現象も起きている。

なぜ今、戦車なのか? 自身もかなりのミリタリーファンとして知られるバンダイビジュアルの杉山潔プロデューサーにお話を伺った!

 

 

―女子高生が学校対抗で戦車で競い合うというストーリーですが、美少女と戦車という奇抜な組み合わせはどうやって生まれたのですか?

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杉山 アニメの世界では、女のコたちがメカに乗って競い合う設定自体は割とスタンダードなもので、我々はそこに特別な思いはないんです。

ただ、なぜ戦車にしたかというと、私と一緒にチーフプロデューサーをしている湯川(淳)がかつて、船で女のコたちが戦う『タクティカルロア』(2006年)という作品を作っていました。その制作会社が今『ガルパン』を作っているアクタスなのですが、そこの現場の人たちが実は戦車が好きで、戦車のアニメを作りたいという要望がどうもあったらしいんです。

一方で、私はそれ以前に女のコが迎撃機に乗って地球を守るという『ストラトス・フォー』(2003年)という作品を作っていたんです。私が女のコと飛行機、湯川は女のコと船という組み合わせをやっていて、次は「陸」だよねと。

 

 

―そこで「戦車」となるのは必然的な流れだったんですね。

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杉山 戦車を扱う作品となると、ある程度の知識が必要ですが、私は自衛隊の実写ドキュメントを作っていて自衛隊とも20年以上の付き合いがありますし、その分野に強い方のネットワークもありましたので、こういう作品なら杉山が向いていると思われたのでしょう。「やる?」と言われて「やるやる!」と手を挙げて始まったんです。

 

 

―そうして始まった『ガルパン』は学園モノですが、まず「華道、茶道、戦車道は乙女のたしなみ」というムチャな設定に驚きました! しかもその戦車道は学校で単位まで貰えます。その発案は一体、誰が?

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杉山 戦車を使ってお話を作るにあたり、部活だとありきたりですし、違う方法でうまく世界を作れないかと打ち合わせをしていたところ、湯川が「いいこと思いついた! 武道にすればいい!」と。私も高校の授業で柔道を習っていたのでそんなイメージで考えていて、体育の授業や武道という形でいこうという話に。あの戦車道という言葉を思いついたのは湯川で、ちょっと天才的なひらめきでしたね(笑)。

 

 

―制作するにあたって難題があったとか…

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杉山 『ガルパン』は戦車部分はすべて3DCGで作っていますが、それまでの手描きのアニメでは、戦車はまともに動かすことができないメカだったんです。アニメーションは基本として、少しずつずらした絵を1枚1枚手描きしなければいけないんですよね。戦車には履帯(=キャタピラー)というものがあり、細長い「履板(りばん)」がたくさん繋がっている。動いている様子を作画するということは、その履板を1枚1枚ずらした絵を書いていかなければいけない。

さらに戦車はキャタピラが動くだけじゃなくて、転輪が地面の凹凸に合わせて動いたり、砲塔が回ったり、砲身が動いたり、ハッチが開いたりと動く所がいっぱいあり、なおかつ非常に複雑な面構成をしているので、絵にすると線がたくさんある。そのすべての線を手描きするとなると、コストと時間を度外視すれば不可能ではないのですが、やはりそれをビジネスに乗せるのはほぼ無理だったんです。

ただ、過去になかったわけではなく、例えば『風の谷のナウシカ』の中にも手描きの戦車が動いているシーンがあるので見直していただくとわかるんですが、ものすごくカットが短く、カット数も少ないんです。カットによっては一番動く履帯のところを描かないで済むレイアウトになっていたりして、そこはみんな工夫でうまく回避していたんですね。

つまり、戦車というのは工夫しないと描けないものだったんですよ。ただ、今はCGというものがあって、一応、技術的にはできるようになりました。とはいえ、これまではそのCGもTVシリーズの予算とスケジュールには収まらなかったのですが、ようやく目途(めど)がたってきて。そこで、やるなら逃げないガチンコの絵を作って、今まで誰も見たことのない戦車のアニメを作ろうということで始まったんです。

 

 

―そしてまずはTVシリーズが誕生するわけですね。スタッフもようやく作りたかったものを作れるということで、気合いが入りますね!

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杉山 そうですね、まあ気合いが入りすぎて時間もかかり、TVシリーズを2回落としちゃったんですけど(笑)。結果的に、実はまだちょっと早かったということかもしれませんね、コストもかかりましたし(苦笑)。

 

 

―「戦車の描き方がスゴイ」とファンの評価も高いですが、実物をかなり意識されたのでしょうか?

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杉山 基本的に、出てくる戦車は第二次大戦中に実在した戦車です。各国の大戦中の戦車ですので、当然、日本には残ってない物がほとんどですし、現在は動かない物のほうが多いので、かなり作る上でハードルが高かったですね。

参考資料も少なくて、大戦中の記録映画や写真を探したり、戦車を稼動状態で持っている海外の博物館の映像を探して参考にするとか。あとは、戦車の中身は全然違うんですけど履帯で地上を走るという部分では同じなので、陸上自衛隊に協力を得て、実際に走る戦車を取材したりしました。

 

 

―そこまでしてリアルな臨場感を! 砲撃音も戦車によって違うというこだわりに驚きましたが、砲弾の大きさも実物と同じなんですか?

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杉山 ああ、それは肝(きも)の部分なのでこだわりました。中で装填手のコたちが弾を込めていますが、戦車の設定に合わせたリアルな大きさだったりするんですね。重量はさすがに違いますけど(笑)。また、戦車の装甲の厚さや積んでいる砲は、それぞれの国のその時の考え方があるので、すべての戦車が全部バラバラなんですよ。

 

 

―それぞれの国の考え方とは、第二次世界大戦当時の戦略や戦術ということですか?

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杉山 そうです。その国の戦車運用によって戦車のデザインは変わってくるし、目的が変われば当然、戦車が積んでいる砲の大きさも変わってくるので、そういうのも全部調べ上げました。例えば、この距離でこの角度で、この戦車がこの戦車を撃ったら、何メートルなら装甲を抜けるかという有効射程距離も計算してあります。

ストーリー上でこの戦車をこの戦車と戦わせて勝たせるためには、どの距離まで近づかなきゃいけないから、じゃあどういう戦術で近づくか、みたいなところまで考えながら作りました。そういう部分は専門家の方に監修に入っていただいて、意見を聞きながら脚本に落とし込んでいきました。

 

 

―地道な作業ですね! 監修を頼んだのは戦車の専門家ですか?

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杉山 そうですね、実はいろんな専門家がいて、『劇場版』でいえば、戦車にはほぼ国ごとに監修者がいるんです。やはりその国の戦車を主に研究している方々がいらっしゃるので、ドイツの戦車ならこの人、アメリカの戦車ならこの人、フィンランドの戦車ならこの人、日本の戦車ならこの人…という風に監修をお願いしています。飛行機に関しても飛行機の専門家に監修いただいたり…。

 

 

―そういえば戦車を積んだ輸送機も出てきましたね。

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杉山 あれも実在の輸送機で、実はコクピットの中の計器も全部正しく表示されているんですよ。外の景色の傾きに合わせて機内の「姿勢儀」(航空機の姿勢を水平線と比べる計器)もちゃんと傾いているとか、そこまでやっています(笑)。

 

 

―何度見ても新しい発見があるそうで、リピーターも多い理由はそこですか。

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杉山 そうですね、実は現場で相当、作りこんだところもあるんです。監修者だけでなくスタッフにも好きな人が多いので、どんどん自分でマニアックなネタを盛り込んでくるんですよ。それも誰かが指示したワケでは全くないんですけど(笑)。なので、何度か観て「ここでこんなことやってたんだ」と気付くことはよくありました。

TVシリーズの頃からそうだったんですけど、どういうネタがどこにどれだけ盛り込まれているかの全体像は、完全に把握している人はほぼいないんじゃないですかね(笑)。掘っていくといろんなとこに小ネタが埋まっているので、掘るのが楽しくなっちゃいますよ!

 

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